君と一番の恋をする
「ほんとに麻里花だった。よかった、間違えてなくて」
小さな袋を手にぶら下げた、見知った顔の姿があった。
「奏太くん……どうしてここに?」
いや、人のことは言えないけど。
現れたのは、奏太くんだった。
「松井の家から帰ってきたところなんだ。結構暗くなっちゃったけど」
“松井”とは、確か奏太くんと同じ5組の松井くんのことだ。
「麻里花はどうしたの?」と聞かれたのでコンビニ帰りだということを伝える。
「そっか。危ないし、途中からだけど送ってくよ」
「うん。ありがとう」
……普通に会話、できてる気がする。前よりも自然に。
「今日から冬休みだね。吹部は活動ないし、俺も久しぶりにゆっくりできそうだよ」
「そうだね。たくさんイベントもあるし、なんだかんだいって忙しくなるかもだけど」
懐かしんだ柔らかくて優しい声が、鼓膜を震わせる。
そういえば、声も好きだった。小学生の時に、泣いてると慰めてくれたんだ。“大丈夫だよ”って。でも今は、それを私だけに向けてほしいとは思わない。奏太くんが好きな人ならうれしいと思う。
幼なじみはやめられないけど、その形はそれぞれある。そして私はまだ、奏太くんと友達という形でいたい。