君と一番の恋をする
「つまり、具体的には?」

「具体的には……名前を呼び捨てにするとか」

「陸人くんが、私のことを?」

「その逆もしかり、ですけど」



互いに呼び捨てにするなんて、ちょっと想像つかない。この呼び方が定着しちゃったからなあ、違和感があるかも。

だけど陸人くんの意見はできるだけ受け入れたい。



「よし!試しに私のこと呼び捨てにしてみて!」

「分かりました」



私はまだ知らなかった。その迫力がすごいことに。

陸人くんは私のほうを向く。



「……麻里花」



人生で何回も聞いてきた自分の名前のはずなのに、なぜか胸を甘く突く。



「は、はひ」

「ふっ、そっちが敬語になってどうするんですか」

「あっ、ご、ごめんね。びっくりしちゃって。あと、すごいどきどきもした……」



あとついでに、顔も赤い気がする。

全身が熱くて、恥ずかしい気持ちだ。

隠すように頬を両手で包んで下を向く。



「先輩、かわいいです。いつもかわいいけど」

「り、りくとくん……!」



それ以上はやめてほしい。爆発してしまいそうだ。



「……先輩ってもしかして、というかやっぱり褒められ慣れてないですよね。かわいいとか言われるの」

「う、まあ、普段は言われるより言うほうが多いかも」

「じゃあこれからは、先輩が人を褒めた数よりも先輩のこと褒めるし、かわいいって言います」

「わ、分かりました……でもどうして、突然こんなこと言い出したの?」
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