君と一番の恋をする

朝、私の憂鬱な一日が始まる。
別に生きることに疲れたとか、悩みがあるとかそういうわけじゃなくて。

いや、ある意味悩みなのかもしれない。
というか、夏休みが終わったばかりなのにテストだらけで嫌になってしまう。
まだまだ残暑の続く9月の始め。私は、いつもの通学路を歩いていた。

このところ台風で雨ばかりだったから、雲一つない真っ青な快晴は、私の憂鬱な気分を少しだけ取り払ってくれる。
肩に付くくらいの長めのボブを手でいじっていると、ざわざわと一つの大きな高校生の集団が見えてきた。
すごいなあ、活気に溢れてる。まぶしいっ。

私は門を通って下駄箱に向かう。
つい最近まで夏休みだったせいでこの一連の流れが懐かしい気もするけれど、やっぱりあの7月と8月が恋しい。
いっそ夏休み前に戻してくれないかなあ。


そう考えながらぼーっとしていると、気づけば自分の教室の前に着いていた。

二年三組。ここが、私の教室。
扉が閉まっていたので開けようとしたとき、突然目の前の視界が開けた。
現れたのは、数学教師なのに体育会系の担任槇原(まきはら)先生。私を見た瞬間、槇原先生が大きく口を開けて笑顔になった。


「おお、佐藤!ちょうどよかった!これを捨ててきてくれないか?」

「……え?」


返事をする間もなくゴミ袋を二つ持たされる。


「悪いな!じゃ、よろしく!」


そして、私の横を通り抜けてさっさと行ってしまった。
手元に残ったのは、パンパンの大きなゴミ袋。

……しかたない。捨てに行こうか。
私はとりあえず教室に入って荷物を置き、それから教室を再び出た。
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