君と一番の恋をする

その日の放課後。
吹奏楽部所属の私はクラリネットの入ったケースを片手に、侑人に話しかけた。


「侑人ってさ、一年に弟っている?」


テニス部の侑人はラケットを持ちあげながらこっちに振り向く。

「え、いるけど、言ってなかったっけ?」
「うん。最近初めて知ったんだよ。まーほと同じクラスなんだって」


知ったのは最近じゃなくて“今日”なんだけど、さすがにそこはちょっとお許しください。

「えっ、そうなの!?」


すると驚いたことに、侑人が目を丸くした。

「そうなのって、侑人、まーほのクラス知らなかったの?」


侑人のことだからまーほのクラスなんてとっくに知っていそうなのになんだかびっくり。
まあ、意外と知らなかったりするもんね。
と、思ったら。


「ううん。陸人が五組なのを今初めて知った」


いや、そっちかい!
私は心の中でツッコミを入れる。そうとは思わなかった。
私は肩を落としながら「ありがとう、そしてごめん。侑人」と言って教室を出る。

磯田侑人と、磯田陸人。
なんだか大変な兄弟に足をつっこんでしまったなあと思い、音楽室へ向かった。
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