君と一番の恋をする
「ねえねえ麻里花知ってる?」
今日の練習が終わり、フルートの美葉ちゃんと音楽室を出てすぐにそんなことを言われた。
「え、なにが?」
そう尋ねると、美葉ちゃんがテンション高くふわふわのポニーテール揺らした。
「次の部長!三年生の投票で決まるらしいんだけど」
「へ~そうなんだ」
そういえば、そんなのある気もする。もうこんな時期なのか。
三年生が部活を引退するのは文化祭のある11月だけど、部長任命式があるのは毎年この時期なんだ。
「うわさだと、早瀬くんが次期部長なんだって」
「え」
その名前を聞いた途端脳裏に浮かぶのは、きれいな顔立ちにさらさらの髪。手元にはアルトトロンボーン。
私の幼なじみで……初恋の、早瀬奏太くんだ。
私と同じく中一のころから吹部に入っていて、だけど楽器自体は小学生の頃からやっていたから素人目で見てもけっこうな演奏だ。
恋をしていたのはもうずっと前のことだから今は好意なんてないけど、なんとなく気にはなってしまう。