君と一番の恋をする

その日の夜、私はまーほの部屋の扉を叩いた。
といってもいつものように返事は返ってこないので、問答無用で開ける。


「今すぐ出て行ってお姉ちゃん」
「ちょっとー、そんなこと言わないでよ〜。お姉ちゃん、まーほに聞きたいことがあってさ」
「……なに?手短にお願いね」


ベットの上で寝ながらゲームしていたまーほは、こっちを見ずに淡々と話す。
私はその態度にもう慣れているため、特に気にすることもなくまーほに近づいた。


「あのね、まーほのクラスに磯田陸人くんって子がいるでしょう?私その子のお兄ちゃんと同じクラスなんだけどさ、どんな子なのかなーっと思って」
「それ聞いてどうなるわけ?」


まーほの脳内がこの質問を重要じゃないと判断したのか、はたまたゲーム時間を邪魔されたのが嫌なのか、めちゃめちゃに不機嫌そう。

「お願い!答えて!今度なんか奢ってあげるからさ」


手を合わせると、まーほはため息をつきながらコントローラーを動かす手を止めた。


「……陸人は、よく言えばクール。悪く言えば無愛想。頭のほうはよくわかんないけど、運動神経はいいほうなんじゃない。体育祭の一年リレーでうちのクラスのアンカーだったし」
「なるほどね~、ありがと!」
「用が済んだならとっとと帰ってくれない?」
「じゃああと一つだけ!まーほの好きなタイプは?」


ちょっと勢いとノリで聞いてみたけど当然返答は返ってこず、私は無言で部屋から出てドアを閉める。
クール、無愛想。運動神経がいい。侑人とはやっぱりまるで正反対だな。と思い、出会って日の浅い記憶の曖昧な陸人くんの顔を思い浮かべた。

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