君と一番の恋をする
「一年の初秋の、放課後だったと思うわ。たまたま部活で遅くなったとき、教室に戻る途中にテニスコートの前を通りかかったの。そしたら、磯田くんが誰もいなく外も暗い中必死に素振りをしてて。……それで、そんな真剣な姿がかっこいいなって思ったの」


そう語る表情は、なにかに想いをはせるような感じがした。


「……でも、今年は同じクラスなれたと思ったら、よく周りをうろついているのがいるし」


一瞬私をじろりとにらみつけたかと思えば、すぐに優しく笑った。


「まあ、私は私なりに頑張るし」
「それってストーキング?」
「な、違うから!あれは決してストーキングなんかじゃないの!」
「自覚はあるんだ~」


「麻里花のいじわる!」と言って可愛く頬を膨らませる奈央ちゃん。こんなんやられたら、世の男子はイチコロだろうな。
私も胸打たれちゃう。


「さむっ」


突然、奈央ちゃんが腕をさすりながらそうつぶやいた。どうやら、誰かが扇風機を付けたみたい。
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