君と一番の恋をする
風の吹く初秋
二学期中間テストが終わったあとのある日の放課後。
「佐藤さん、いる?」
今日は全部活が休みなので自分の席でゆっくり帰りの支度をしていると、覚えのある声が聞こえた気がした。
「佐藤さーん!」
「うわっ、はい!」
と思ったら、大声で自分の名前を呼ばれたのでちょっとびっくりして、慌てて返事をする。
椅子から立ち上がりドアへ向かうと、そこには誰かが立っていた。
いや、“誰か”じゃない。
「ちょっといい?麻里花」
それはまぎれもなく奏太くんの姿だった。
教室前じゃ邪魔になるからと、連れてこられたのは廊下の一番端。この辺は電気がなく窓もないので、年中暗い。
でも、それが今はちょっと好都合だ。
「えっと、私になにか、用事があるの?」
「ああ、うん」
話すのは、いつぶりだろう。二年生になってからは一度も話してない気がする。それに二人きりってなるともうずっと。中学のころだって危ういくらいだ。
まあ今その会話が、途切れてしまったのだけど。
なんでこんなに気まずい雰囲気になるのか、私には分からない。
だって奏太くんとは喧嘩しているわけでも、付き合っていたわけでもないし。
ただ私が昔、一方的に好きだっただけで。