君と一番の恋をする
……私がどうにかできるのなら、やろうと思った。別に悪いことじゃないし。
引き受けることを告げると、奏太くんはなぜか顔を曇らせた。


「ごめん、ほんとに。急だし」
「奏太くんが何回も謝ることなんてないよ。私、頑張るからさ!」


気持ちが伝わるようにガッツポーズをして笑って見せると、奏太くんはおだやかに微笑む。
ああ、そうだ。こういう笑顔を見せる人だった。私は、それが好きだったんだな。


「ありがとう麻里花。じゃあ、よろしくね」
「うん」


そして奏太くんは、忙しそうに廊下をかけて行った。
風のうわさで聞いたけど、奏太くんって文化祭実行委員なんだっけ。

結局奏太くんが部長だという話は本当だった。吹部の次期部長としての準備だってあるだろうに、大変だなあと思う。

でもああやって頑張る姿はかっこいい。それは、一人の友人として。
さて。私は教室に帰るか。と歩き始めようとしたとき。


「あ」
「あっ」


三階への階段を上る、ある男子生徒と目が合ってしまった。
思わず二人で声をあげてしまう。


「……久しぶりに顔見るよ、陸人くんの」


目の前には、約二週間ぶりに会う陸人くんがいた。まさか、こんなとこで会うなんて。


「倒置法で話す先輩、暇そうですね。今から屋上にどうですか」

「陸人くん怖いね~」
「もうほら、早く行きますよ」


出会って開始30秒。私は彼に無理矢理手を引かれ、四階までの階段を上った。
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