君と一番の恋をする
試しに握ったり開いたりしてみると、陸人くんはあからさまなあきれ顔をこっちに向けてくる。

「なんですか、それ……。頭の中、お花畑なんですか。先輩って」


お花畑……ではないとは思うけど、そんなことは別にいい。今はただ、陸人くんと仲良くなってこの状況をなんとか乗り切りたい。
私の頭の中にあるのは、それだけだ。


「じゃあ、ちょっと見てて。えーっと、こうして……」


私はさっそく指と指を重ね、中指を内側に折り曲げる。作っているのは、なんか一番簡単そうな蛙だ。
あとは、左右の人差し指と親指同士をくっつけて……。


「よし!出来たよ!梅雨の蛙~!」


バッと思いっきり手で作った蛙を空に掲げる。

夕日がほとんど沈みかけた暗い空には、ちょっと場違いな気もするけど。


「なんだか、夜の蛙って梅雨って感じがするんだ。まあ、見たことないけど。あはは」


と笑って見せると、普段あきれ顔と無表情顔しかしてなさそうな陸人くんが笑ってくれたような気がした。
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