君と一番の恋をする
「先輩声大きいので気が付きました」
「す、すみません……」


小さく頭を下げながら、立場大逆転だ……とひそかに思う。
実は精神年齢陸人くんのほうが高いんじゃないか説を疑っている。

というかそういえば、陸人くんってこっちの電車だったんだ。
侑人と帰ったことってほぼないから知らなかったけど。
そこであることを思い出した私はかばんを地面に置いて、着ていたカーディガンを脱いで陸人くんに差し出した。


「ごめんね、借りっぱなしで返すの忘れちゃって」
「……別に、大丈夫です」


陸人くんはカーディガンに触れると、私に軽く押し付けてくる。
いや……え、受け取ってくれないの?
あ、そうか!洗って返せってことか!なるほど!
確かに着たのにそのまま返すなんて、非常識だもんね。

一瞬疑問に思ったけどすぐ答えにたどり着き、カバンにしまっておこうときれいに畳む。


「いや、なにしてるんですか」


なのに即座にツッコまれて、私は驚く。
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