君と一番の恋をする
「……だから、そういうことじゃなくて」


カーディガンを手に持ったまま置いていたかばんを手に取った。ガタガタと走行音が近づくのを感じる。


「―――麻里花先輩との、関係って―――――」


その瞬間、横を電車が風を巻き起こしながらホームに入ってきた。
陸人くんの口は動いているけど、何を言っているのかは聞き取れない。
あっという間に止まった電車は、音を立ててドアを開けた。


「ごめん陸人くん。さっきなんて言ったの?」


電車の音で聞こえなくて、今度はちゃんと聞き取ろうと耳に手を当ててそう尋ねる。
だけど、「別に、いいです」とそっぽを向かれてしまった。
……よく分からないけど、陸人くんがいいならいいか。


田舎の電車内は帰宅ラッシュと重なって、割と混んでいた。
こんなの都会のと比べれば空いているんだろうけど、あんまり乗ったことないので分からない。
ここから、目的地まで30分と少し。
ドアに寄りかかりながら、私は眠気と格闘していた。
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