君と一番の恋をする

時刻は、本鈴の鳴る10分前。
私にとって、この高校生活を狂わせたともいえる“ヤツ”が登校してきた。
私の隣の席に着いてかばんを置き彼が口にするのは、普通のあいさつ。


「おはよう、麻里花」


きれいに澄んだ瞳に、爽やかで曇り一つない笑顔。

「お、おはよう」


軽く手をあげて返してみる。ちょっとぎこちなかった気もするけれど、運よく気づかれてないみたい。


磯田侑人(いそだゆうと)。それが、この男子の名前。
可愛い系の顔で、見た感じ身長は170センチ前後ほどで可愛いだのかっこいいだのと騒がれることもしばしば見かける。
でも、見かけは正直どうでもいい。問題はここから。


「あ、麻里花」
「えあ、な、なに?」


侑人が席について話しかけてきたので、ちょっとびっくりしながら返事をする。
すると、さっきまで笑顔だった顔が急に悲しげになり、眉が下がった。
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