君と一番の恋をする
さすがに教室の前だと騒ぎになりかねない。奈央ちゃんが頷いたのを確認して、私たちは近くの空き教室へ入った。

なるべく人が入ってこないようにドアを閉めて机にカバンを置き、まだ静かに泣く奈央ちゃんへ向き直る。

正直心当たりはない……けど、聞いてみるしかないか。


「……奈央ちゃん、何かあったの?」


涙を上品にハンカチで拭いながら、奈央ちゃんは口を開いた。


「……麻里花。あんたの妹でしょ、昨日磯田くんとデートしてたの」

「え……。なんで……」


私が言えたのは、精一杯のその言葉。

予想だにしていなかった驚きの発言に、頭が真っ白になる。

だって、奈央ちゃんが知ってるなんてありえない…………ことはない、かも。

見かけたとか、ストーカーしてたのとか。可能性はあるけど……。


「勘違いしないでね。私は別に磯田くんのこと追っかけてたわけじゃない。……たまたま、見ちゃったのよ」


鼻をずずっとすすりながら、奈央ちゃんは俯く。

一瞬でもストーカーだと思った自分を殴りたい。奈央ちゃんがその辺の加減を理解してることくらい、分ってるのに。

……それに、見られちゃったのなら何も言えないや。
私は正直に話すことにした。
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