君と一番の恋をする
「……奈央ちゃんの見た通り、侑人と私の妹は確かに昨日一緒に出掛けた。侑人に口止めされてたから誰にも言ってなかったんだ。ごめん。……もし奈央ちゃんが感情をぶつけるなら、その相手は私でもいい?」


奈央ちゃんを傷付けてしまった事実。罪滅ぼしかもしれないけど、私はそうしたかった。
侑人もまーほも、もちろん奈央ちゃんも悪くない。そしたら奈央ちゃんはどこに想いをぶつけるんだろう。

……その痛みが、私にはほんの少しだけわかる。


頬を伝う涙をいっぱいいっぱいに掬い取って、奈央ちゃんは私を見た。


「……じゃあ、お願い、一個聞いて」

「うん。もちろん、いいよ」

「じゃあ……」


奈央ちゃんは近づいてくると、私をぎゅっと抱きしめた。
私はそれをしっかり受け止める。


「今日一日、私のこと慰めなさい」

「うん、了解」



奈央ちゃんの席は一番前で授業なんてサボりたいはずだろうに、何事もなかったかのように受けていた。

すごいなあ、と思う。自分の好きな人が別の異性といるのを見かけたら、私ならきっとショックで立ち直れない。奈央ちゃんは、強いよ。
板書をしながら、侑人のほうをちらりと盗み見る。こいつもこいつで大変だ。女の子を好いたり好かれたりで。本人はそんな自覚、ないだろうに。
< 81 / 150 >

この作品をシェア

pagetop