君と一番の恋をする
こんな雨じゃ、きっと誰も気付かない。全部濡れてしまったし、せっかくならフェンスに寄りかかろうか。
私は立ち上がって屋上に一番端に座り、膝を抱えた。
雨はどんどん強くなって、空は昼間とは思えないくらい真っ暗。
あのときは陸人くんも一緒だったけど、今日は一人。さすがの私でも、心細い。
濡れた髪や制服が、身体に張り付いて冷たく、寒い。暖を求めるように膝をぎゅっと胸元に引き寄せた。
寒いとき、陸人くん、カーディガン貸してくれたなあ。ちょっとぶっきらぼうかなと思ってたのに、案外優しくて。そういえばあの尾行以来からは全然会えてないけど。
キーンコーンー……と、微かに予鈴が聞こえる。お昼休み、もうすぐ終わっちゃうのか。
そういえば雨だけど、絵筆ちゃん大丈夫だったかな。中庭で食べる予定だったから、濡れてないといいんだけど。……約束、すっぽかしちゃったし、あとで謝らないと。
そんなことを考えながら、私はチャイムの音を最後まで聴く。あと5分もすれば授業が始まる。5時間目、なんだっけ。……でもたぶん、受けられないだろうから、別にいっか。
膝に顔を埋めると、視界が真っ暗になる。
雨が止むように願うけど、強くなるばかり。大きくなった雨粒が身体に当たって、痛い。
ざあざあと音はひどくなり、もうたぶん、本礼が鳴っても聴こえない。
―――だから、屋上の扉が開いたことなんて、気が付かなかった。