君と一番の恋をする
ふわっと肩に何かがかかる。

あの日と、同じ感覚。




「……先輩。麻里花先輩」



優しく私を呼ぶ声。幻聴、かな。だって、こんなところに、人がいるわけ……。

私は無意識に顔を上げると、雨のフィルターでぼやけた先に、顔が揺らいで見えた。

じっと目を凝らすと。



「……り、くと、くん……?」


そうつぶやくと、はいと返事が返ってきた。


「えっ、ほんとに陸人くん……っ!?」


陸人くん……はもう一度返事をする。
私はびっくりして思わず立ち上がった。それに合わせて、陸人くんも立ち上がる。


あ……こんなとこ、恥ずかしい。

私は弱ったところを見せたくなくて、濡れた顔を手で拭う。



「……ありがとう。でもどうしたの……?陸人くん、こんなところにいたら濡れちゃうよ。しかも、もうすぐ授業始まっちゃうよね?」



かすかに震える声でそう言う。

だけど、今度は返事が返ってこなかった。まっすぐ見つめられる。



「……私はね、いろいろあって。……で、でも、2回目だから、全然平気!慣れたもんだよねー。私にしては冷静だったし。……だから陸人くん、私はね……」
< 98 / 150 >

この作品をシェア

pagetop