君と一番の恋をする
そのとき、ぎゅっと暖かいものに包まれた。
大丈夫だよ、と繋げようと思ったのに、私はその言葉を飲み込んでしまう。
代わりに心臓がどきどきと高鳴る。
これは、抱きしめられてるってことで、いいんだよね……?
急すぎて理解が追い付かない。
「……どうして」
「……え?」
「……どうしていつも、なんでも、平気そうにするんですか」
「え……」
これだけ近いと、雨音が強くてもよく聴こえる。だからなおさら、意味が分からない。
だけど、この暖かさが冷たい心を癒してくれてるみたいだった。どこかで私は、陸人くんがここに来てくれたことに、安心している。
しばらくしてから陸人くんは腕を離し、代わりに私の手首を掴んだ。
「ここから出ましょう」
引っ張って私たちはドアに向かって歩き出す。
あの日と同じ光景。だけど今度は陸人くんの背中が、違って見えた。