ワケアリ(オカルトファンタジー)


暗闇の中に、黒尽くめで現れた私を、誰も最初気づかず、気付いたときには耳がそぎ落とされた状態で、一瞬の間、呆けて、耳から流れてくる液体を首をかしげて、触れる。



そして気付き、痛みが溢れ、絶叫。



「ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!!!」



鋏は沢山の血脂で滑(ぬめ)っていたが、切れ味が落ちることはなく、恐ろしいほど研ぎ澄まされていくようだった。


この鋏は戦いの中で成長していく、剣士だ。


沢山の血を吸って、強くなる、騎士だ。


首なんかよりも軽い耳を切り落とすという作業は、手応えは少ない物の、とてもやりやすい。


片方の耳は、鋏で。


もう一つは、包丁で。



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