ワケアリ(オカルトファンタジー)


辺りでカメラが割れる音がする。呻き声と叫び声がこだまして、消えていた住宅の電気がつく。


その頃には私は、そのまま走り去っていた。


風のように速かった。


嘘のように体が軽くて、まるで夢でも見ているような、思い描いていた、戦士になれたような気がした。




バツン、…




まだ手に感覚が残っている。


あの少し固いこんにゃくを切り落とすような、弾力性。


血だらけの裁ちばさみと包丁を手に、瓦の上でも飛んで走っていけそうなほど私の身体は軽かった。



あなたのお望みどおり、任務を遂行いたしました。



そう、心の中で唱えた。


いつか褒めてくれるだろうか、いつか喜んでくれるだろうか。


いつか気付いてくれるだろうか。


私があなたの願いを叶え続けているのだと。



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