ワケアリ(オカルトファンタジー)
嘘だと思うのが早いか、それでもこの声は紛れもなく今まで何度もこの鋏に血を吸わせ続けたその声だった。
心臓が、爪を立てて掴まれた様に、締め付けられる痛みと、刺されるような痛みを感じた。
そして心臓を掴んだその手はその柔らかい筋肉に深く大きな真一文字を刻み付ける。
私は思わず胸を押さえて嘔吐(えず)いた。
胃の中身など何もなかったので、空気と唾液が吐き出されただけだったが、思わず涙が溢れた。
あの人は私の正体を知っている。
その上で、消滅を願っている。
私の想いなど、知ることもなく。それどころか、私に憎しみを抱いている。
私はただ、あなたの望むままに、あなたの願うままに、従っただけなのに。
身体を折って、私は泣き崩れた。
何故、あなたは私を見てはくれないのですか。