ワケアリ(オカルトファンタジー)
「なんか深い話だったなぁ…」
一通り、売れていった品物の話やその他の余談を聞き終わったチェスは、はぁー、と息を漏らして呟いた。
対するリオンは感慨に浸ることもなく、読みかけていたままの本をそのままに隣に座るチェスを眺める。
不思議な生き物を見るような目で。
「…深い話なのにリオン、その目止めなよ」
自分へと向けられている露骨な視線に拗ねたように唇を尖らせて、チェスは抗議する。
「お前は本当に不思議な生き物だな」
「動物みたいに言うなよ、もー!」
リオンにとってチェスの感情は理解に欠けた。
リオンは淡々と話を語っていく一方で、自分の中では何とも思っていない、いわば今の話は入学式や卒業式の答辞のようなものだった。
それに感想を述べられ、しかも感傷に浸られれば首も傾げたくなる。
莫大な知識と、思考能力を兼ね備えてはいても、リオンは感情と言うものを著しく欠如していた。