ワケアリ(オカルトファンタジー)
結びの指輪
ワケアリ No.5
『結びの指輪』
「チェス」
立ち止まって投げられたその低い声に、後ろについて歩いていた色素の薄い茶色の髪をショートにしているカジュアルな格好をした十代前半ほどの少年が訝しげに問う。
「何?リオン」
立ち止まった、黒尽くめの男に呼びかけながら、チェスはいつもはしている眼鏡が、今日は懐に仕舞われ、何の隔たりなく見える彼のダイレクトな眼の先を辿り、彼の足元へと視線を落とした。
そこには廃れた一つの指輪。
条件反射でそれを拾い上げたチェスは指先で軽く、汚れをふき取った。
5号か7号ほどのその銀の指輪は幅が3mmほどで、英語が細かく羅列している。その文字に首を傾げる、チェス。
程なくして、
「なんて書いてるか読めないや」
「そのテの指輪に書かれているものは永遠の愛の誓いか、聖書か、無意味な文字だ。…ポケットに入れて持って帰れ。店に置く」
「これを?……また何かあるの?」
「なければ拾わん」
チェスの身長を30cmほど超えたその色白の美貌は、言い切ると滅多に浮かばない笑みを口元に張り付けた。
初対面の人間が見ても、チェスが見ても、思う一言。
「リオン、今腹黒い顔してるよ…」
*
『結びの指輪』
「チェス」
立ち止まって投げられたその低い声に、後ろについて歩いていた色素の薄い茶色の髪をショートにしているカジュアルな格好をした十代前半ほどの少年が訝しげに問う。
「何?リオン」
立ち止まった、黒尽くめの男に呼びかけながら、チェスはいつもはしている眼鏡が、今日は懐に仕舞われ、何の隔たりなく見える彼のダイレクトな眼の先を辿り、彼の足元へと視線を落とした。
そこには廃れた一つの指輪。
条件反射でそれを拾い上げたチェスは指先で軽く、汚れをふき取った。
5号か7号ほどのその銀の指輪は幅が3mmほどで、英語が細かく羅列している。その文字に首を傾げる、チェス。
程なくして、
「なんて書いてるか読めないや」
「そのテの指輪に書かれているものは永遠の愛の誓いか、聖書か、無意味な文字だ。…ポケットに入れて持って帰れ。店に置く」
「これを?……また何かあるの?」
「なければ拾わん」
チェスの身長を30cmほど超えたその色白の美貌は、言い切ると滅多に浮かばない笑みを口元に張り付けた。
初対面の人間が見ても、チェスが見ても、思う一言。
「リオン、今腹黒い顔してるよ…」
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