ワケアリ(オカルトファンタジー)
すぐに奥から紅茶の香りが漂ってくる。
その香りを鼻腔の奥へと吸い込みながら、リオンは眼鏡を掛ける。
これはリオンが本を読む時に欠かさない眼鏡で、リオンが眼鏡をはずしていることは、風呂か、就寝時以外にあまりない。
出かけるときは掛けたり掛けなかったりと様々だ。
いつものスタイルに戻った所で、リオンは隅に置いていた本を、栞を頼りに開くとまた読みふけり始める。
「アッサム入ったよー」
「…ん」
トレイに二人分の紅茶を入れたチェスが店と生活スペースの間の段差に戻ってきた。廊下と呼べるその場所にトレイを置いて、チェスは早速、紅茶と共に運ばれた、クッキーを口に入れる。
リオンはお菓子には目もくれずにティーカップを手に取ると一口、飲む。