ワケアリ(オカルトファンタジー)
「…ん」
合格、と言う意味を含むその声にチェスは少し嬉しそうに、また空っぽになった口にクッキーを一つ、入れた。
「チェス、あの指輪を出せ」
「ん?あぁ、忘れてた」
口をモグモグと動かしながら、チェスはポケットを探って先ほど、買い物の帰り道で拾った指輪を取り出すとリオンに差し出した。
カップを置いて、リオンはそれを受け取るとその指輪を鋭い眼光で睨みつける。
「この指輪、嵌めるなよ」
「嵌めたらなんかあるの?」
「………」
リオンは眺めていた指輪から視線を逸らし、チェスへとチラリ、視線を向ける。
対するチェスは首を傾げたまま、どうかしたのか、と顔が物語っている。
「指輪と言うものが、古来、女がつける首輪が簡略化したものだということを知っているか?」
「え、知らないよ。そうなの?」
「あぁ。婚約指輪をエンゲージリングというが、エンゲージとは婚約するという意味の他に、従事する、占める、束縛する、といった独占的意味も持っている」