ワケアリ(オカルトファンタジー)
親が留守の間、遊んでいた子どもが閉じ込められて死んだという戸棚や、動かせば先代が死んだ時刻ぴったりに死ぬという柱時計、火をくべれば叫び声が聞こえてくる今まで何人もの人間が燃やされたストーブ、異国の奴隷が恨みの中100人斬りを果たしたダガー。
その他にも人喰いカラスの羽で作られた羽ペンと、人間の心臓から抜き取った血をふんだんに使ったインクのセットであったり、浄化作業をしても抜けない邪気が篭った水晶玉だとか。
一度チェスが商品に悪戯をしたとき、自分の意識を乗っ取られた。
夜中に徘徊をくり返し、意味のわからぬ呪詛を無意識に呟いて、自分の指を切って、血文字で悪魔を呼び出す魔法陣を書き始めたらしい。
その時の記憶はなく、リオンがあっさりとその呪縛を解いてくれたお陰で意識が戻ったが、その悪戯がバレて、リオンのあの恐ろしい眼が更に鋭くなり、とてつもなく低い声で呪いの言葉のように延々と理論的な叱責を受けた。
激昂して怒鳴りつけたりしない分、余計に怖い。
それ以降、チェスはもう余計なことをしないと心に固く誓った。
操られていたときよりも、その時のリオンが、幽霊や呪いなんかよりも段違いで、真夜中に魘(うな)されるほど怖かったからである。
かくして、その銀の指輪は小物コーナーへと、飾られた。
来るべき、主人を待ちわびる為に。
カラン、
コロン、
*