ワケアリ(オカルトファンタジー)
「どうしようー」
長谷川茜(ハセガワアカネ)は左手を天井に掲げてそのまま腰を下ろしていたベッドに寝転んだ。
ボスン、とベッドが声をあげてスプリングがギシリと鳴る。
天井は先ほどよりも少し遠くなって、相変わらず部屋は蛍光灯の光に照らされて眩しい。
「困ったなぁ」
見つめる先は左手の薬指に嵌められた、シルバーのシンプルな指輪。
数時間前、友人の家へ遊びに行った帰りに見つけた店に立ち寄ったときに見つけた物。
その店では、黒尽くめの男と、普通過ぎる少年の奇妙な二人がいた。
その二人に訝しがりながら店内を眺めていると、一つの棚に金を基調とした美しい模様の施された皿があった。
そこに、この指輪は置かれていた。
指輪にはサイズも、値段も何も書かれておらず、持って帰ってブザーが鳴ることも無さそう。
この店の無用心さに少し呆れる。
呆れながら茜は試しに、指に嵌めてみる事にした。
デザインはシンプルで、茜の好みだったのだ。