ワケアリ(オカルトファンタジー)


何処に入れようかと少し迷って、右手の中指に入れる事にした。すると、そこは第一関節が邪魔して入らない。


では、とその隣の薬指に入れようとする。しかしこれも少し関節が邪魔をして入らない。


小指に嵌めるのは大きすぎる。


指輪を持ち替えて、今度は左手の薬指に指輪を嵌める。


すると、そこはピッタリと指輪が嵌った。


指輪が嵌った左手の指を少し広げて、茜はその指輪をまじまじと眺めた。


茜の指は細いので、そういったシンプルで細い指輪が良く似合う。



「綺麗…」



英語の羅列、と言うのもなんだかカッコイイ。何が書かれているのかは知らないが。


だがしかし、左手の薬指。


そこは本来恋人から指輪を貰った時につけるべき場所で自分で買った指輪をわざわざそんなところにつけるなんて、自らチャンスをなくすようなものだ。


そう、茜はまだ恋人などいない。好きな人さえもいない。


出会いは求めているが、そんなに切羽詰っているわけでもない。


なので、ここに指輪が嵌っていても別段問題はないが、このままでは、ずっと恋人がいないままになってしまう。


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