ワケアリ(オカルトファンタジー)
「……ッ!」
何処から何処までが夢なのか、検討も付かなかった。
ただ、昨日起こったあの恐ろしい闇に包まれた男を驚愕の表情で思い返す。
嫌にリアルな、それでも夢のような、悪夢のような、…現実…?
ジットリとまた、汗が浮かぶ。
手の甲で顔の汗を拭い、目を閉じて鏡を元の位置に戻すと、着替えを持って茜は風呂場へと向かった。
いつもより早く目覚めたお陰で汗を流す時間はある。
風呂場へ向かう途中、朝食の準備をしている母親は珍しく早起きをしてきた娘を大層驚いた様子で眺めた。
首の痕には気付かないまま。
叫び声をあげたはずにも拘らず、母親はその事について触れることさえもしなかった。
まるで何も無かったかのように。
全てが夢だと、いうように。
*