ワケアリ(オカルトファンタジー)
「政治などの参加も、昔は男にしか権利はなく、政治家になることを女は許されていない時代が長く続いていた。その頃の時代…、勿論国民の間でも女を犬と思って足蹴にする男も少なくはなかった」
「うん」
「一時的欲求の解消道具や、苛立ちの矛先……まぁ、これは今でも続いているが」
理解できない、と言いたげにリオンは眼鏡のブリッジをクイ、とあげながら続ける。
「男が女を奴隷として買うことは少なくはなかった。その時、首輪の代わりとして指輪をつけたんだ。…もちろん大半は首輪だったが、外に連れ出す時に首輪をしていると、そういう趣味、であると思われてしまう。それをひけらかす人間と隠したい人間の二種類がいた。殆どは後者だ。そして、指輪が流行った。その時に付けられる指輪は抜けないようにワザと小さめの物が送られた。抜けないように、逃げないようにとな」
「それが……この間の指輪?」
「そういうことだ」
そして、チェスはこの間まで店に置かれていた小ぶりのシルバーリングを思い出した。
奴隷としての、証であるその指輪。
「じゃあ…指輪の気が強いって言ってたけど、それは付けられていた女の人の恨み?」
「いや」
一つ首を横に振って、返す。
「男の方だ」