ワケアリ(オカルトファンタジー)



「女の首を切り、眼球を抉り取り、腐りかけの内臓を抜き出し、脚と腕をもぎ取って、舌を切り離し、耳を削ぎ落とし、内蔵を細切れにして、それでも女は微笑みながら起き上がるから、指を切断した」



「お!指輪が外れたらどうなるの!?」



「身体は動かなくなった。が、左手の薬指が蛆虫のように床を這いずり回った」



「…うげ…っ…!」



想像したのか、真っ青な顔をしてチェスは眉を寄せた。


実はチェスの嫌いな物は虫で、ゴキブリでも蝶でも、蛆虫でも、小蝿でさえも、苦手だ。



「男はその指を踏んで、指輪を外した。すると、指も動かなくなった。しかし、身体の中の臓物を抜き取られても動き続けるゾンビの幻影に悩まされるようになり、発狂した男は事故に遭って死んだ。が、男は自分が死んだとは気付いておらず、まだゾンビの幻影に悩まされ続け、結果、指輪に取り憑いた男は、これをつけた女を何度も殺そうと試みる」



「トラウマになるよなぁ、そりゃあ」



「…以上が、この間拾った指輪の物語だ」



「気持ち悪かったけど面白かった!」



チェスの返答に大した喜びもなければ、不謹慎だと眉を寄せることもなくただ「うむ」と言葉を呟いて、リオンはチェスにティーポットを差し出す。


いつの間にか空になっていたそれを受け取って、チェスは靴を脱ぐと台所へと走っていった。


脱ぎ散らかされた靴を見て、一つのため息とともに長い指先が、その自分より少し小さい靴を揃えて隅へと置いた。



のんびりとした時間が過ぎる。

















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