ワケアリ(オカルトファンタジー)
「ただいまー!リオン、ミントティー売り切れてたよ」
「…………」
「……リオン?」
両手に袋を提げながら、そんな買い物の報告をしたチェスに対し、リオンは無言のまま、いつもはつけている眼鏡を外し、窓の外を眺めていた。
聞こえなかったという事はない。
殆ど車は通らない静かな場所だし、電車はまだ通ってはいない。そしてチェスの声はそんなに小さくもなかった。
チェスはどうしたのかと首をかしげて、問いかけた。
その声に漸くリオンは顔をチェスへと向けて、そして、先ほどのチェスの言葉とは全く関係のない言葉を投げかけた。
「火事が起こっていなかったか?」
「へ?……あぁ、なんか消防車が走ってたよ、国立病院のほう」
「……そうか」
「ニュース見てこようか」
そういってチェスは生活スペースへと向かうと荷物をキッチンへと置いて、片隅にある小さな小さなテレビをつけた。
これはリオンがテレビが嫌いな事もあり、出来るだけ小さい物を選んで拾ったものである。