ワケアリ(オカルトファンタジー)
それをつけると、リオンたちの住む場所から少し離れた国立病院が映り、その建物は黒い煙を吐き散らかし、そして、所々で人間を吐き散らかしていた。
叫び声と、轟音。
ヘリの音と、リポーターの叫ぶような中継。
その声を聞きながら、チェスはリオンへと報告をする。
「お昼過ぎに病室の一つから出火した火が一気にその病室を燃やし尽くしたんだって。火災報知器があったお陰で、殆ど避難は出来てるけど、死者数名とまだ残された人たちもいるみたい」
「あの指輪の暴走だな」
「へ?そうなの?」
「あの辺りから指輪の気が伝ってくる。女は命拾いをしたようだな」
本を読み終わったらしく、書斎へ返しに行く途中で、その小さな電気の箱を見下ろせば、然して興味も無さそうにすぐに書斎へと入っていった。
チェスは赤い車が吹き出す白い水を何となく眺めていた。
逃げ惑う人々。
背丈も年齢も格好も性別もバラバラに、ただ、一つのものを求めて逃げ惑う。
「生」というもの。