ワケアリ(オカルトファンタジー)
建物の幾つかの窓から手が伸ばされ、煙に恐れを抱いた数名は止める声も聞かぬまま、飛び降りている。
「火は少ないね」
「多分あの部屋のみを燃やしただけだろう。女が逃げた所為で、諦めたんじゃないか?」
車椅子ごと、落ちた人間がいた。
車椅子と同じようにひしゃげる瞬間に、映像は、『安全な世界』であるスタジオに移り、違和感を覚えるその貼り付けられた不安そうな顔を映していた。
チェスはその、
コ ン セ ン ト の 刺 さ っ て い な い テレビの電源を消した。
本を本棚へと几帳面に戻したリオンは店の方へと戻ると靴を履いた。出かけるようだ。
「リオンどこ行くの?」
「仕事」
「仕事放り出して仕事?」
「留守は頼むぞ」
「はーい」
カランコロン。
乾いた柔らかいベルの音が、響いた。
*