ワケアリ(オカルトファンタジー)
普段歩き慣れている道も、車椅子で進むとなると、とても不便であることが分かる。
手首にヒビが入っている所為で小さな段差さえも乗り上げることが出来ない茜は何度も失敗して、漸く乗り上げて、その頃には数分が経っている、ということが何度もあった。
学校に辿り着くまでに何十分も掛かり、腕は重く、だるくなって、勉強をする前から帰りたくなるほどだ。
幸いにも学校に辿り着けば先生達が手を貸してくれたり、友人達が車椅子を押してくれたお陰で学校内では楽が出来た。
とはいえ移動教室のたびに友人に負ぶってもらったりしていると流石の茜も申し訳なく感じる。
しかし、自分の脚は使えない。
本当は入院を強く勧められていたにもかかわらず、いきなり炎に脚を焼かれた直後にまた違う病院で入院など、すぐに頷けなかった。
数日間だけ入院して、出来るだけの応急処置と、日々のリハビリ運動などを教えてもらって、逃げるように茜は退院すると普通の生活に戻った。
週に幾度かのリハビリを約束させられて。
元の生活に戻ってから気付いたが、警察は茜の指輪には何とも言わなかった。
一度指輪の存在を忘れたまま事情聴取に応じた時、終わってから気付いて冷や汗が出たが、警察官は何も言わずに事情聴取を終えた。
茜は、忘れかけていた指輪を見る。
指輪を盗んだあの日から抜こうと試みる間もなく、立て続けに事故が起こって指輪の存在を忘れてしまっていた。
正直、それどころではなかったと言うのが現状である。