ワケアリ(オカルトファンタジー)
久しぶりに落ち着いた今に、茜はそのシンプルな指輪へと手を伸ばし、引き抜こうと試みた。
が、
「痛っ…」
皮膚と指輪がピッタリと張り付いたように、外すことは愚か、動かすことさえ出来なかった。
まぁ、警察も探してはいなかったようだし…
茜はおぼろげになりそうな記憶を辿りながら指輪を盗んできた店を思い返していた。
沢山の調度品や雑貨の並ぶ、落ち着いた雰囲気の店。
そういえば、指輪はおろか全ての商品に値札などは一切かかれていなかった。
店の主は黒尽くめの妙な男と、中学生ほどの少年。お金をふんだくる為の、詐欺集団にしては何とも頼りげのない店員だ。
「気付いてないのかなぁ」
小さいしなぁ、と溜息交じりに呟くとボウッと運動場を眺めた。
そう、今、茜のクラスは体育の時間で、それに参加できない茜は着がえる事もせず、と言うよりは出来ずに、皆が楽しそうに参加しているサッカーの様子を眺めていた。
太陽が徐々に動き、陽だまりが茜の頬を焼く。