ワケアリ(オカルトファンタジー)
「……チェス」
「へ?」
リオンはダージリンティーを飲みながら、チェスは紅茶よりもおやつを口にしながら客のいない暇な時間をもてあましていた。
並べられていたクッキーが皿から一つまた一つと消え、4分の3ほどをチェスが食べ終えた頃。
リオンの口が静かに動き、チェスは今まで怒らなかったリオンが、最後の一枚だったチョコクッキーが実は食べたかったのかと、少し上ずった声で返答を返した。
対するリオンはそんな上ずった声に気にも留めずに、眉を寄せて不満げに呟いた。
「あの指輪、男の怨念かと思っていたが、違うな」
「んえ。あの指輪、まだ続いてるの?」
クッキーを頬張りながらの間抜けた声に、紅茶を飲みながらの真面目な声。
チェスは「もうとっくに死んでるかと思ってた」と不謹慎な言葉を呟いたが、リオンはさして気にする様子もなく顎元に手を置いて、少し眉根を寄せた。
「……厄介だな…」
「…そう?」
チェスは自分がクッキーを食べ過ぎていることを注意されるわけでないとわかると、残り少ないクッキーの一つを口に入れた。
そんな様子を意にも介さずに、リオンは続ける。
「見誤ったな……アレにはまだ女の怨念が残っていた」