ワケアリ(オカルトファンタジー)
その言葉にエルヴィスは一気に目を輝かせると「やったー!」と叫びながら庭を走り回った。
はしゃぎ回り、身体全体で長期不在だった父親の帰宅を喜ぶ子を見て、微笑む母。
エルヴィスの父親は戦に出かけていた。
国からの大事な仕事で、今回の任務は危険を伴う激務だと聞かされていた。
『お前達が安全に暮らせるように悪者を退治してくるからな』、そういって父はその大きな背を幾分正して、戦場へと向かった。
エルヴィスはそんな父を誇りに思っている。
テレビで見るヒーローなんかよりも、敵地に赴いて自分たちの家族や国を守るために身を粉にし、戦う自分の父親の方がずっとかっこいい。
父親の身体はいつも傷を作って帰って来たが、エルヴィスにはそれが勲章のように思えて、自分もいつかあんな傷を沢山作りながら大切なものを守りたいと願っていた。
そんな、危険な地からの、父の生還。
父が無事に帰ってくる事も然る事ながら、父が聞かせてくれる敵地での様々な苦難と、それに打ち勝ってきた父の武勇伝を聞くことがエルヴィスの至上の喜びだった。
「いつ?もうすぐ?」
「今夜よ」
「俺出迎えるよ!」
そういってエルヴィスは逸る気持ちを抑えきれずに庭中を走り回り、家にいた家政婦などにそのことを触れ回った。
しかしエルヴィスは知らない。
自分の父親が、国が、土地を広げたいが為に、罪のない人々を惨殺して行っているという事実を。
*