ワケアリ(オカルトファンタジー)
「そしてその時俺は『言い残すことは無いか?』と聞いたんだ。するとその男は『助けてくれ』と答えた」
「うんうん、それで?」
「だから俺は言ったのさ、『お前みたいな悪党は、助けられない。精々死ぬ直前まで聖書を読み上げろ』とな。そして最後の悪党を倒したんだ」
「へぇ!やっぱお父さんカッコイイね!」
父、ニコルが帰ってきてからエルヴィスはせがんで敵地での武勇伝を聞かせてもらっていた。
久しぶりに一緒にとる、夕食。
食事をするのも忘れるほどに、エルヴィスは父の話に耳を傾けていた。
食事が終わってもまだ聞きたりないのか、父親も話たりないのか、一向にエルヴィスは父親の傍を離れようとはしない。
そんな様子を母親は微笑ましく、台所で夕食後の紅茶の用意を、家政婦はテーブルを拭きながら眺めていた。
たくましい筋肉のついた父の身体はエルヴィスとは比べ物にならないほどで、父の大きく太い膝は丸太のようだ。
一度も戦場と言うものを見たことはないエルヴィスはその場所を、テレビの映像での知識と想像を使って思い描きながら熱心に聞き入っていた。
父の語り聞かせるその話はどんなファンタジー小説や、冒険小説にも負けないほど、聞いていて心が弾む。
楽しそうに語る父の顔を見ながらエルヴィスはそれ以上に嬉々した様子で一通り、父親が体験した戦場での話を聞き終えた。
丁度そこで、テレビのニュースが始まり、他国の消滅を報道した。
それはニコルが赴いた戦地で、最後の砲撃の瞬間が流れている。
「この砲撃の後に、この屋敷に入って行ったんだ」
「へぇー、お父さんこんなところに行ってたんだ。なんか汚い国だね」
「でも綺麗な物もあったぞ」
父はそういうとエルヴィスへ、土産だと言って一つの綺麗な装飾の施された小箱を差し出した。