ワケアリ(オカルトファンタジー)
それは大人からしてみれば普通の、小柄なエルヴィスからしてみれば少し大きい箱で、赤基調の上にゴールドの模様があしらわれている。
アクセサリーボックスのようなその派手な装飾に、エルヴィスは「うわあ」と言葉を失った。
とても綺麗な箱だったのだ。
「とても高価な箱だ、…これをお前の宝箱にしろ。本当に大切な物を入れるんだ」
「うん、ありがとう!お父さん!」
父の大きな手がエルヴィスの頭を少し乱暴に撫でる。
この箱に何を入れるかは決めていないが、それを決める事も子どもにとっては楽しい。
特にこんな綺麗な箱ならば、下手な物は入れられない。本当に大切な物を、入れなければ。
エルヴィスは自室に戻ると何を入れようかと頬を緩ませながら考えた。
その箱が、何の罪も無く惨殺された人の私物だということも知らずに。
「カッコイイなぁ」
そう呟きながら、エルヴィスは指でその金の装飾部分を撫でた。
いつか大きくなったらこの箱の中に軍人の隊員バッチや、階級バッチを入れよう。
キラキラした綺麗なこの小箱には、キラキラした綺麗なバッチが一番似合う。そう思ったのだ。
父親の制服に付けられたいくつものバッチを見るたびに、自分も同じものが欲しいと願うようになった。
勿論、父親が仕事を下りれば譲ってもらえるだろう。
だが、エルヴィスは自分のバッチがほしかった。