ワケアリ(オカルトファンタジー)
「ただいまー!」
友人と軍隊ごっこをして遊んでいたエルヴィスは日が暮れる頃、服を泥だらけにし、玄関のドアを乱暴に開けて帰って来た。
そして自分の部屋へと忙しなく階段を駆け上がり向かうと、ベッドの上に荷物を放り投げて、すぐに階段を降りていった。
キッチンにいるはずの母と家政婦に、今日の夕飯のメニューを聞いて、それを待ちわびる為に。
最後の段をピョンと飛び降りて、右手にあるドアを開けた。
「お母さん、ご飯何ー?」
勢いよく開けられたドアと同時に、エルヴィスは声をかけた。
そして、いつもなら忙しなく家政婦と母が動き、夕飯の匂いが立ち込めるキッチンに何の慌しさも無く料理の匂いもしない事にエルヴィスは首を傾いだ。
いつもいるはずの人たちがいない。
暫く考えたエルヴィスはもう一度名前を呼んだ。母親と、家政婦の名。
「お母さん?ラシェル?」
しかしその声に答える者は無く、エルヴィスは途方に暮れた。
他の部屋にいるのだろうか。
そう考えて、リビングへと向かうべく歩を進め、リビングへと続くドアを開けようとした、瞬間。