ワケアリ(オカルトファンタジー)
バン!!
と、扉が荒々しく開かれ、そこには家政婦のラシェルが血走った目で、エルヴィスを見下ろしていた。
いつもは穏やかでやさしいラシェルがその面影無く、睨みつける姿に、エルヴィスはビクッと怯え、恐る恐る問いかけた。
「ら、ラシェル…?何、どうしたの…?」
「この悪魔どもが!!」
そういってラシェルはエルヴィスの服を掴むと、リビングのソファへと投げつけた。
突然の事に叫び声さえあげることも無くソファへと叩きつけられたエルヴィスは、その反動でソファから床へ転がり落ち、自分の身に起こった事に理解が出来ずに目を丸くしてラシェルを見上げる。
優しい母と、逞しいがそれほど怒る事も無く、と言うよりほとんど戦場に行っていた父のお陰で、エルヴィスは暴力など殆ど受けたことが無い。
ましてや大人からの暴力など。
「な…何するんだよラシェル…!」
言って、身体を起こそうとしたとき、ソファについた滑りが手に、ベットリと付いた。
その不快さに何事かとその手を見ると、土に汚れたままだった手が新しく赤い汚れをつけていた。