ワケアリ(オカルトファンタジー)
「お前達は私の国を奪った…私の家族も、私の帰る場所も!あの国の人たちが何をしたというの!?ただ穏やかに暮らしていただけなのに、こんな汚い国の発展の為に、あんなにも綺麗だった国を見るも無残に壊していくなんて…!!」
突然の事に、エルヴィスは理解できずに呆けた。
ただわかることは目の前で泣き崩れる家政婦、ラシェルが自分の両親をその手に握り締めた血塗れた料理包丁で殺したという事だけだ。
そして、自分の父親が言っていたことを思い出す。
『今から行く国に住んでいる人間達は皆悪者なんだ。こいつらがいると、この国は滅茶苦茶にされる。だから退治しなければならない』と。
「ラシェルは…お父さんが戦いに行った国の人なの?」
その問いかけに泣き崩れていたラシェルは元から黒い、エルヴィスとは違った肌の色をしたその手で顔を覆い隠し、泣きながら答えた。
「私は出稼ぎにここへ来ました。私の国は貧しいから、長女である私が働かねば、家族はみんな死んでしまうから…。なのにその主人が…お前の父親が私の家族や国を…!!」
「そっか…」
それだけ言うと、エルヴィスは何の躊躇いも無く、立ち上がると、戸棚に隠し置かれている護身用の拳銃で、ラシェルの脳天を貫いた。
血液と脳のシャワーが壁を、床を、ソファを赤く染める。
生温い、一瞬の雨。
エルヴィスはその身体に受け切れなかった反動で、背中を戸棚に打ちつけた。
一瞬の出来事に、ラシェルはただ呆然とエルヴィスを見上げ、そして何が起こったのか気付き、驚愕の表情を浮かべた。
その表情を見ながら何の怯えもないままに、エルヴィスは、戸棚に踵を引っ掛けて反動に耐える準備をすると、次にそのふくよかな胴体へ銃弾を撃ち込んだ。
使い方は父が教えてくれた。
両手で持っても反動で後ろに仰け反るし、手の平が痛い。