ワケアリ(オカルトファンタジー)


『いいよこのままで』。


エルヴィスは男の背中をじっと眺めて真っ直ぐに答えた。


男は何も言わずに目を閉じたままだ。


ただ小さく「そうか」と返して、それっきり口を開かない。


何をしているのかは知らないが、男は警察に電話するわけでも、死体の回収をするわけでもないらしい。


暫くして男は翳していた手を戻すと、何事も無かったかのようにキッチンへと戻り、入ってきたときと同じく庭へと続く窓から外へと男は出て行く。


それを引きとめるように、エルヴィスは問いかける。



「…何をしてたの?」



「仕事」



「お兄さんの仕事って?」



「魂の回収」



魂。


男の言葉を反復したエルヴィスはそれでもその言葉がぴんと来なかった。


よく理解が出来ていないエルヴィスを見据え、男は一つ、忠告をした。

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