ワケアリ(オカルトファンタジー)
「肉の塊を、自分の親と勘違うな。それは物であって、親ではない」
「…じゃあ…僕、一人…なっちゃったの…?」
それでさえも、ぴんと来なかった。
いつも家に誰かがいて、泣けば誰かが宥めてくれた。笑えば周りからも笑い声が聞こえていた。
それがなくなる感覚が、エルヴィスには理解が出来ないでいる。
両親が死んだ事も気付いてはいるが、心臓は、その人間の核である心臓は自分がちゃんと持っている。
一番大切なものを入れれば、手にしていればどこか、救える様な気がしていた。
助けられなかった両親も、欠片だけでも残しておけば、自分を守ってくれるような、そんな錯覚をしていた。
だがしかしそれには手もなければ大きな身体もない。
抱きしめてくれないし声をかけてもくれない。
優しい声で名前を呼んではくれないし、面白い話を聞かせてくれるわけじゃない。
あの時心臓を抉り取らなければ自分の両親は、気を失っていただけの両親は、死ぬことは無かったのに。