ワケアリ(オカルトファンタジー)
どちらかを選べば、自分を正当化して、この男を殺すスリルを味わおうと思っていたのに。
「じゃあ殺せないや」
少し不貞腐れたように返しながらエルヴィスは、男と同じく庭先へと下りた。
「人殺しよりもスリルのあるものを知っているか?」
「え、何?」
「観察。自分の手ではなく、あくまで第三者として人の死を観察することだ。殺人はリスクが高いからな」
よくわからない、と言いたげにエルヴィスは首を傾げる。カンサツ?小学校で宿題に出される、植物とかの?
疑問は尽きずに問いかけるエルヴィスに男は答える。
「死とは色んな手段・方法・状況・感情の中で行われる駆け引きだ。それを、少し手伝い、観察する。……やってみるか?」
「手伝いってどんなの?お兄さんは何をするの?」
その問いかけに簡潔に言ってのけた、男。
「…紅茶を入れろ。俺は本を読む」