ワケアリ(オカルトファンタジー)
この世界はなんてうるさいのだろうか。
リオンは手を翳してそんな彼らの中から、ガードレールにいる血だらけの比較的新しく死んだ男の魂を引き寄せる。
ふわふわと漂うその白い塊を手にすると、他の魂はそのままにして、先を進む。
「お前達はもっと、憎しみを貯めろ」
そうすれば新たな憎しみを生むことが出来る。
そういいながら、去っていった。
手中の魂はこれ以上憎しみを貯めることのできない、中途半端な魂だ。こんな魂は残していても仕方が無いのである。
ましてや、未練が自分の娘にしかない男の魂など、あった所でなんの仕事もこなせない。
リオンの探している魂は、連鎖していくほどの憎しみを湛えた魂なのだ。
それが物に宿っていれば尚いい。憎しみは憎しみを増長させ、美味い魂にありつくことが出来るからだ。
ちなみに先ほど拾った魂は食べても美味しくないので早々に天国なり地獄なり娘のところなり、何処でも好きなところに行けと飛ばしてやった。
『ありがとう御座います』
地縛霊は、その場所から動く時、霊感の強い人を介さなければ動くことが出来ない。
しかし霊感の強い人に呼び寄せてもらわないことには、介することさえ出来ない。
リオンに連れ出してもらえたお陰で娘のところへいける男は嬉しそうに、泣きながらそう礼を述べてふよふよと頼りなく飛んでいった。