ワケアリ(オカルトファンタジー)
「…フン」
さして嬉しくも無さそうに、リオンは鼻を鳴らすと先を歩く。
暫く歩くと、公園の片隅にある茂みの裏で一人の小さな少年が同じく小さな少年となにやら楽しそうに何をして遊ぶかを考えている。
リオンはその様子を何をするでもなく、眺める。
少年は、鏡の中の自分と、会話をしていた。
その鏡はグリム童話、「白雪姫」に出てくる鏡のような、豪奢な作りの鏡だった。
子どもがしゃがんで、全身が写る程度だから縦横1mほどだろうか。
「ね、今日は何して遊ぶ?」
『睨めっこはどう?』
「いいね、それ!じゃあやるよ?」
「『にーらめっこしましょー笑うと負けよーあっぷっぷ!』」
そして鏡の中の少年と、鏡に自分の姿を映している少年は、違った顔を作った。
そして、同時に笑いあい、左右対称の手で指差す。
リオンはその興味をそそる鏡を眺めていたが、他の人間に仕向けた所で、この少年のように順応できないと言う難点を思いついた。
この鏡は、鏡の中の人間が、仲良くなった人間の身体を乗っ取ろうとする鏡だ。
この少年もいつかは乗っ取られてしまい、魂だけが鏡に吸い取られ、鏡の中でまた、身体をのっとる事のできる人間を探すのだろう。
仕方なくリオンは鏡を諦めた。
歪な笑い声は、止むことなく、重なり合って響いた。
*