ワケアリ(オカルトファンタジー)



「チェス、客は?」



色素の薄い茶色の髪をショートにしているカジュアルな格好をした少年、チェスはその言葉に首を横に振って答える。



「今日はまだ来てないよ」



そうか、と然してショックを受けることも無く返すといつもの指定席に腰を下ろす。


膝ほどの段差。幅は1m半ほどだろうか。


店と同じように茶色と言うよりは焦げ茶の木材が使われた、その膝ほどの段差を上がればリオンたちが生活する部屋。


そこは店と、家を分け隔てる唯一の場所であり、リオンの指定席だ。



「ねぇリオン」



「何だ?」



「リオンってさぁ、いつから死神やってんの?俺が14歳の頃より前だから結構前なんじゃないの?」



調度品の手入れをしていたチェスがその手を止めて問いかけてきた。


少なくともチェスが14歳になった頃から今日まで軽く100年ほどは過ぎている。


チェスは父親が持って帰って来た呪いの掛かった宝箱の所為で、不老不死の身体になり、リオンと生活を共にするようになった。


彼の両親は未だ心臓のみとなったが生きていて、その呪われた宝箱の中で鼓動を続けている。


呪いを解けば両親は愚か、チェスもすぐに死ぬだろう。



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