ワケアリ(オカルトファンタジー)
対して、ドアベルを鳴らした、もとい、リオンの店のドアを開けた当人は、敵対心を見せるリオンをなんとか宥めようとアレコレと思考錯誤している。
無理もない、彼はリオンと喧嘩をしに来たわけでもないのだ。
しかし、
「うるさい、出て行け」
リオンの態度は素っ気無さを通り越して冷たかった。
「お前は昔から本当に可愛げのないやつだな、この恩知らずめ」
「お前は昔から本当に耳障りなヤツだな、恩着せがましいことこの上ない」
はぁー、と盛大に溜息をつきながら、片手で軽くコメカミを押さえる。彼の白い髪が微かに揺れた。
彼は、白いシャツに、白いズボン、白いベルト、白いネクタイ、白いブーツに長い白の外套(マント)、そして白く襟足ほどまでしか伸ばしていない、髪。
ボタンや指輪などのアクセサリーはゴールドで、それ以外を覗けば全てが白い。
リオンとはすべてが間逆だった。
彼の方は表情もコロコロと変わり、殆ど変化のないリオンと比べれば、実に人間じみていた。
リオンよりも少し身長の低いその全身まっ白のその男はリオン相手じゃ話にならないと気付けば、リオンの背後、生活スペースで様子を伺っているチェスへと声をかけた。